* やさしい副腎皮質過形成症の話 *


1)ホルモンとは何?

 生き物の体は、様々な「命令」によって働きます。
電気の信号を利用して、筋肉を動かしたり、情報を伝えるものは
「神経」(しんけい)とよばれています。
 一方、血液の中を流れていって命令を伝えるものは「ホルモン」と呼ばれています。
ホルモンはゆっくりと効果を出します。
ほんの少しの量で様々な働きをすることもホルモンの特徴です。
ホルモンが作られる場所は内分泌腺(ないぶんぴつせん)と呼ばれています。

2)副腎(ふくじん)について

 お腹の中の奥深く、背中に近いところに腎臓(じんぞう)というオシッコを
作る臓器があります。副腎はその腎臓のすぐ上にある小さな内分泌腺です。

3)副腎皮質ホルモンについて

 副腎は髄質(ずいしつ)と呼ばれる真ん中の部分と、皮質(ひしつ)と呼ばれる
まわりの部分からできています。皮質から出てくるホルモンは3種類あります。

■ 膠質コルチコイド(こうしつコルチコイド);
 血液の中のナトリウムを増やして、塩分のバランスをとります。
不足すると血圧が下がったり、元気がなくなったり、ひどいとショックを起こします。
 >代表選手はアルドステロンです。

■ 糖質コルチコイド(とうしつコルチコイド); 
 血圧を維持してストレスなどに対抗するためのホルモンです。
 >代表選手はコルチゾールです。

■ 性ステロイド(男性ホルモン/女性ホルモン);
 それぞれ体を男らしく、女らしくするためのホルモンです。
 >男性ホルモンの代表選手はテストステロンです。

4)さて、だんだん話がややこしくなってきましたので、たとえ話をさせて下さい。
わかりやすく説明するためにはしょっている部分や、多少間違っている部分も
あると思いますが、まずはおおまかに理解するためとご理解下さい。



「ふくじんひしつ かけいせいしょう」の話


 まずは下の図を見て下さい。これはふくじんでホルモンが作られるようすをぬいぐるみ工場に例えたものです。

  


 いきなりホルモン(完成したぬいぐるみ)ができるのではなく、いくつもの段階をへて作りあげられます。

 ホルモンというのは体のぐあいを「いい調子」にするために体がつくるものです。ホルモンにはいろいろな種類があり、足らないと背が伸びなくなったり、勉強ができなくなったりと、いろいろと困ったことがおきます。

 その中でも「ふくじんひしつ」で作られるホルモンは命にかかわる大切なものです。

ふくじんのホルモンの紹介

アルドステロン;かわいいブタのコックさんは、体の中の塩の見張り番。塩がうすすぎると血圧が下がり、元気がなくなってしまいます。

コルチゾール;かわいいイヌのおまわりさんは、体の元気の見張り番。お熱を出したり病気の時、体が「ストレス」に負けないようにはげましてくれます。

テストステロン;かわいい男の子は、「おとなの男の人」になるための案内役。筋肉がたくましくなったり、おヒゲが生えてきたりします。


 さて、これが順調にいっている工場です。毎日、毎日、いくつものホルモン(ぬいぐるみ)が作られては、運ばれていきます。

 ところが、このしくみがちょっとモタモタしてしまい、うまくホルモンができない体質があります。それを大人の人は「ふくじん かけいせいしょう」とよんでいます。

 「かけいせい(過形成)」というのは、大きくふくれあがっている状態です。がんばってもがんばっても上手にホルモンができないので、工場を大きくしたり、材料置き場に作りかけの「ぬいぐるみの素」があふれたりして、ふくじんが大きくなるのです。

 ホルモンを作る道具の調子がよくないために、ふくじんのホルモンが足りなくなり、本当はいらないホルモンや作りかけの材料が増えるのがこの体質のとくちょうです。では、次に下の図を見て下さい。


 おやおや、何だか大変なことになってます。

 「ブタのコックさん」と「イヌのおまわりさん」がいなくなってしまい、かわりに顔のない「作りかけのイヌのおまわりさん」と「男の子」がたくさん増えてしまいました。

 さあ、大変。このままでは体の塩かげんがメチャメチャになって、ストレスに負けてしまうかもしれません。それに放っておいたら、女の子でも筋肉ムキムキになっておヒゲが生えてくるかもしれません。

 「ふくじんかけいせいしょう」はみつかるのが遅れると、赤ちゃんのうちに命を落としてしまうこともある、こわい病気です。昔は、よくこの病気で命を落とす赤ちゃんがいました。

 でも安心して下さい。今の日本では「マススクリーニング」といって、生まれて1週間ほどした赤ちゃんは全員検査をして、この体質が隠れていないかを調べています。



 さて、ではこの病気の治療はどうすればよいのでしょう?

 そうですね、できあがった「ふくじんひしつホルモン」を体の中にとりこめばいいのです。のみ薬がありますので、きちんとこのお薬をのめば、お薬に含まれている「ブタのコックさん」と「イヌのおまわりさん」が、ちゃんと体を守ってくれます。

 でも、お熱を出したり、下痢になったりと体にストレスがかかっている時は、いつもより多めに薬をのまないと「ストレスとたたかうイヌのおまわりさん」が負けてしまうかもしれません。だから、病気の時には特にお薬ののみ忘れがないように気をつけましょう。

 のみ薬のブタのコックさんには「フロリネフ」、イヌのおまわりさんには「コートリル」とか「コートン」という名前がついています。お熱の時ののみ方については、みてもらっている病院の先生やお母さんからよく聞いて下さい。

                   このページを作った人; やぶたこどもクリニック / たした ひであきせんせい



      

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